クマのことを知りたければ「クマにあったらどうするか」を是非
最近、クマに関する講演を立て続けに頼まれた。話の内容を補強する意味でクマ関係の本を何冊か読むことになった。中でも「クマにあったらどうするか」が面白かったし、参考になった。この本はサブタイトルになっている「アイヌ民族最後の狩人」である姉崎等さんによる「聞き書き」をまとめたものである。
姉崎さんはすでに亡くなられたが、今から50年近く前、設立間もないヒグマの会でお話を何度か聞いている。あいにく話の中身は記憶していないが、誠実な方という印象は残っている。
姉崎さんが繰り返し強調しているのは、ヒグマは臆病な動物で、ヒトを大変怖がっているのだという点だ。だからヒトの接近に気づいたら鋭敏な聴覚、嗅覚により、まず先に身を隠すものだとも。不幸にして出会ってしまってもクマの方がどう対処したらよいか困っていることも知るべきだ、という。
示唆に富んだ話はたくさんあったが、ひとつだけ意外な対処法として教えてくれた行動を紹介してみると、空になったペットボトルを押すと効果抜群で、ペコペコという妙な音に驚いて退散するのだそうだ。ついでにもうひとつ。ベルトなり、ヒモなどをクマの前でくねくねさせるのも良いという。これは以前から言われていた方法で、意外にもクマはヘビが大嫌いなのだ。
この本は単行本として2002年に刊行されたものが、現在「ちくま文庫」に収められている。クマの性格を知るにも対処法を知るにも格好の一冊なのは間違いない。