今年の夏は暑さと湿度だけではない。カラスの鳴き声が早朝からやかましいと感じる日が多い。普段のカラスの声とは違って、ガァガァとかアーアーとか1羽だけならまだしも数羽で鳴くものだから騒々しいことこの上ない。その場面を観察すると分かることだが、6月下旬から7月上旬に巣立ちした幼鳥が、親鳥に餌をねだって大声でわめきたてるのだ。翼をバタつかせて「餌をくれ!」と要求しているのだ。その声にせかされて親はどこからか食べ物を運んで与える。その繰り返しが2ヶ月も続いている。図体は親と同じくらいになっているのに要するに甘えているのだ。
たいていの野鳥は巣立ち後しばらく親が面倒を見てるものだ。けれども2ヶ月あるいはそれ以上の長期にわたって餌ねだりをする鳥はそうざらにはいない。それにしても親ガラスの苦労がしのばれる。以前と違ってゴミステーションのガードは固く、食べ物の調達に苦労するはず。近くで見た親ガラスは、明らかにやつれていて子より親に同情してしまう。
9月に入ると暑さは次第に和らいでいくだろう。秋風が立つ頃、子ガラスは親に追い立てられ、独立を強いられる。秋の訪れはもちろん、餌ねだりのダミ声から解放される日の近からんことを心待ちにしている。